『みつめてナイト』−ヒロイン、そして主人公に選択を迫る物語

 前回までに、http://d.hatena.ne.jp/settu/20080201/p1や、http://d.hatena.ne.jp/settu/20080209/p4等にて、「みつめてナイト」についても書いてみたりした訳ですが、折角ですので、もう少し「みつめてナイト」について語ってみようかと思います。
 勿論、全力でネタバレですので、ご了承下さい。

みつめてナイト』とは

 そもそも、『みつめてナイト』大体のストーリーは、以下のようなものです。
 物語は、一人の東洋人(おそらく日本人)が「ドルファン王国」の港で、入国手続きをする所から始まります。ドルファン王国は南ヨーロッパの小国であり、隣国と国境問題の為対立状態にあり、戦争に備えて外国人傭兵を手広く募集していました。外国人であっても騎士として取り立てられ、出世することができるという話を聞いて、流れ者だった主人公も立身出世を夢見て、ドルファン王国にやって来たのです。その王国は、陸戦においては剣・騎馬・弓等による戦闘が基本とされており、主人公も傭兵として剣を振るって戦うことが求められていました。
 そして、ドルファン王国と正式に契約した主人公は、鍛錬を行いつつ、動員に備えることとなります。そして、実際に戦争が起これば一傭兵として従軍する、と。
 さて、そんな形で、主人公は、ドルファン王国首都に生活の場を持つ事になった訳ですが、そこで幾つかの偶然、或いは業務上の必然から、何名もの女の子と知り合います。
 その結果、主人公は平日は傭兵・騎士としての仕事(訓練所での訓練)や、アルバイト等をこなしつつ、休日は知り合いの女の子達に気ままに声をかけて、ちょっとしたデートに誘う、という日常を過ごして行く事になる訳です。友達付き合いの延長としてのデートに誘う、という感じでしょうか。女の子の方もそんなに深くは考えない、そんな軽い付き合い。そして勿論、動員が掛かれば一人の戦士として、戦場に向かう、と。
 こんな風にして、主人公の日々は過ぎて行きます。
 四季の移り変わりを感じつつ、修練を重ね、また、休暇には女の子達と適当に楽しく遊ぶ。戦争があれば、自らも騎士として戦う。
 主人公は、騎士として徐々に勲功を重ね、名声を高めて行きます。また、女の子達との関係も、それなりに、徐々に深まって行きます。勿論、それ以外にもいろいろなイベント(ドルファン王国には王宮内の派閥闘争や、諸外国の思惑等の種々の陰謀が渦巻いており、その結果として様々な事件が発生したりする)が起り、時には主人公や、ヒロイン達もそれに巻き込まれたりもするのですが、基本的な流れは変わりません。
 そこにあるのは、その道は平坦でこそないが、確実に己の為すべきことを為し、未来を築いていく一人の傭兵の姿です。
 このままの日々が続いていくのなら、主人公は確実に名のある騎士となるだろう。いつかは戦争も終わるだろう。主人公は、それなりの誇りある立場を与えられ、そこで為すべきことを為せるようになるだろう。
 また、年月を過ごして行くうちに、ヒロイン達との関係も、かなり深いものにもなったりします。勿論、その過程で紆余曲折もありますが、とかく、主人公のことを憎からず思うヒロインが何名か出てきたりします。このままの日々が続いたのなら……、出世した主人公は、今後、さらに関係が深くなったヒロインの誰かと添い遂げ、未来を築いていくのだろう。
 だが、主人公がドルファンにやってきてから3年後、そういった未来図は、突如(勿論、伏線はいくつも張られているのですが)奪われます。外国人排斥法。宮廷内の保守派により、外国人はすべて追い払い、国軍はドルファン王国人のみとする法律が成立してしまいます。戦争が終結し、軍の動員も解除となるこの時が最良のタイミング、ということな訳です。
 結果として、主人公は、否応も無く、再び放浪の旅に出ることになる訳です。

 ……以上が、大体のストーリーです。
 ヒロインはどこへ行ったのだ、と思われる方も多いかと思います。
 そうなのです。勿論このゲームはいわゆるギャルゲーでありますが、ヒロインがどうあろうと、それは、主人公の境遇には何の影響も及ぼさないのですね。だから、あらすじを明記する分には、最終的にヒロインについて言及しなくても完結してしまう。
 主人公がどう行動しようとも……、それは、所詮は一傭兵の行動であり、時局には何の影響も及ぼさないし、及ぼせない。
 どうあがいても、主人公は、3年働いた後、追放となる。
 
 では、このゲームのヒロインの意味は、となる訳ですが。
 ドルファンを追放されることになった主人公。その、出発前夜。
 主人公には、ゲームシステム上のナビゲーターもつとめる、ピコという一人の小さな妖精が相棒として付いているのですが、そのピコが主人公に言うのですね。
 ヒロイン達の誰かに手紙を渡したらどうか、と。このまま別れるのも寂しいから、せめて挨拶したくないか、と。
 そして、彼女は主人公に薦めます。どうせなら、波止場で待ち合わせ、ということにしよう。でも、結局来なかったら大笑いかもね? と。(正確には、メインヒロインのソフィアを始め、何名かのヒロインではちょっと展開は異なるのですが、意味合いにおいては変わりません*1。)

 そして、旅立ちの日。それなりの条件を満たしていれば、主人公は、波止場で意中のヒロインと再会する事が出来る訳です。そして、ヒロインは申し出ます。自分も連れて行って欲しい、と。
 そして、主人公がそれを受け入れ、ヒロインと共に旅立つこととなれば、そのヒロインのシナリオのハッピーエンド、となる訳ですね。……ゲームシステム的には。

ヒロインの選択

 だが、この「ハッピーエンド」、良く考えてみると非常に重いものだったりします。

 そもそも、主人公はヒロインの誰かを、ともに歩む者として、連れて行こうなどとは考えていません。主人公が書いたのは、最後のお別れ、の挨拶の手紙、それだけでした。
 何しろ、主人公はヒロインの誰かと、恋人関係になってすらいないのです。勿論、事実上の恋人と言える程、関係が深まっているヒロインも居たりはします。でも、それだけです。ドルファン王国に主人公が居続ける事が出来たのなら、その先もあったのかも知れない。だが、それはもう、ありえないことになってしまった。
 だからこそ、主人公が書くのは別れの手紙なのです。

 主人公はもう、たとえ、どんなに深く想っているヒロインが居たとしても、添い遂げるのを諦めることを、受け入れてしまっているのです。傭兵ならではの達観、ということなのかも知れません。 

 ところが。
 手紙を受け取ったヒロインにとっては、話はそれで終わらなかった。
 彼女達は、突如、決断を迫られてしまうのです。
 主人公と共に居る事を諦めるか、それとも。
 ヒロイン達の多くは、自らの生活、或いはその内心に、何らかの問題を、或いは傷を抱えて生きています。だからこそ、主人公と関わる事が、彼女達にとっての救いにもなったりもする。
 ですが、それがどんなに不完全なものであったとしても、彼女達には居場所があります。彼女達は女学生、或いは社会人であり、家庭、学校、職場、もしくはその他の居場所を持っています。親兄弟姉妹や、親しき友人達等が居たりします。欠陥はあるかも知れないけれども、ドルファン王国人としての安定した何かがそこにはある。それなりの、夢と希望にあふれた未来設計図も。
 ヒロインは、主人公とずっと共にありたいとも思うかも知れない。勿論、今の機会を逃せば、おそらく主人公とは二度と会えない。だから、決断するなら今しかない。
 しかしそれは、主人公以外の全てを捨てる、ということな訳です。どうあっても主人公は追放されるのですから。ヒロインの一人にドルファン王女が居たりするのですが、彼女ですら、それを食い止める事はできない。というのも、ドルファン王国では、王家の力は絶対的なものではなく、王室会議の有力貴族達の圧力に良いようにされてしまっていたりするのです。彼女は言います。もはやお父様(国王)でもどうにもならない、と*2
 だからこそ、彼女達は決断しなければならない。
 どちらを、捨てるか。

 思えば、今まではどんなに関係が深くなろうと、あくまでも、主人公との関係は友人の延長でした。勿論、主人公も、そしてヒロイン達もそのつもりだったのでしょう。そして、ヒロイン達はほぼ、受身の立場でした。女の子と遊びたい、というような軽い気持ちからのものであったとしても、偶然を装う等の涙ぐましい努力をしてでもヒロイン達に声をかけまくり、仲良くなろう、気を惹こうとしていた主人公に比べ、彼女達は、誘われたから、と気まぐれにそのデートの誘いに応じる程度のものでした。(関係が深くなれば、ヒロインの方から声を掛けて来たりもするのですが。)
 傭兵であるからこそ、ドルファン国内には何も持っていない主人公が、あくまで安全領域を持ったヒロイン達にアプローチしていた訳です。ヒロイン達は、自らは安全領域を持ったまま、積極的に自分達と関わろうとしてくる主人公と付き合うことが出来た。

 ですが、いわば、突如その立場が逆転してしまった。

 たとえ国を追放されても、傭兵としての己の立場を保っている主人公と、主人公と共に在る為には、その他の全て、安全領域を一切合財捨てさらなければならないヒロイン達。捨ててしまえば、そこには、主人公以外の何も残らなくなる。排斥主義が強まっているドルファンの事ですから、それこそ、将来的には再入国も出来なくなるかも知れない。それこそ、将来的に主人公との関係が終わってしまったりしたら、異国の地で苦界に身を沈めるしかなくなる可能性すらある。

 つまり、彼女達は、突如として、居場所、そして祖国すら失った「ただの女」であることを迫られてしまう訳です。(一部のヒロインでは、既に主人公以外の「すべて」を失っていたりもしますが、それでも「ただの女」となる決断を迫られる事には違いはまぁ、無いでしょう。)

 それが、波止場に駆けつけたヒロインの告白、ということ。

主人公も、また

 そしてまた、その時こそ、主人公は初めて選択が迫られることになります。
 連れて行って欲しい、という願いに、主人公はYES/NOを答えなければなりません。自分の意思で。
 YESなら、主人公はヒロインを抱きしめ、ヒロインは笑うことが出来る。NOなら、拒絶されたヒロインは泣き崩れる。
 
 勿論、心情的にはすぐにでもYESを選んであげたくなりますが、これもまた、とても重い選択です。
 そもそも、先ほど述べたように、主人公はヒロインと共に行こうなどとは考えていません。もっとも仲の良かった『友達』に、別れの手紙を書いた。それだけです。
 それどころか、主人公は「誰にも手紙を出さない」という選択肢すら選ぶことが出来ます。先ほど述べたナビゲーターの妖精も、主人公のその選択を否定する事はありません。そうだね、別れが辛くなるからね。彼女はそう言います。それもまた、主人公としての、一つの選択。しかし、その場合であっても、噂を聞きつけたヒロインの一人が、波止場に駆けつけてくることすら、ある。
 いずれにせよ、主人公はヒロインとの関わりを、完全に諦めていた。
 しかし、ヒロインは、共に行くことを申し出た。
 それを受け入れる、とはどういうことなのか。

 普通の告白を受け入れる、というのとは訳が違います。
 主人公がヒロインの願いを受け入れるということ、それは、ドルファンにおけるヒロインの全てを、主人公が自らの手で終わらせる、ということだからです。
 ヒロイン達の中には、素晴らしい夢を持ち、それに向かって頑張っている女の子が何人も居ます。その姿はとても輝かしく、美しい。
 だが、それもまた、ドルファンにあってこそ、祖国にあってこそ、のものな訳です。
 ヒロイン達は「ただの女」になろうとしますが、その最後の一押しは、あくまで主人公の責任で行わねばならない。
 ヒロインの全てを……、主人公が、責任を持たねばならない。
 別れの挨拶の場の筈だった波止場で、主人公は、いきなりそれを選ばねばならなくなるのです。
 しかも、主人公が受け入れるのは、言わば、裸のヒロインなのです。
 人は、誰でも『殻』を、或いは立場を、仮面を持っています。それが当たり前です。互いに、仮面の上から、ゆっくりとコミュニケーションをとって、互いにうまくやっている。恋人同士であっても。
 勿論、緊密になれば徐々に仮面は薄くもなるだろう。だが、それは相互理解の結果として、のこと。
 しかし、突如決断を迫られたヒロインには、その余裕はありません。いきなり全てを脱ぎ捨て、本当の自分の言葉で、告白しなければ、一緒に行くことを懇願しなければならない。
 だからこそ、そこに居るのは、主人公がいつもデートして遊んでいたヒロインではなく、もっと生々しい女性としての、裸のヒロインなのです。
 自ら、「ただの女」となったヒロイン。
 突如としてその裸を見せ付けられた主人公は、その上で、自らも裸として、そのヒロインを受け入れる事が出来るのか。
 出来るのか。

 『小さな灯火』という、みつめてナイトに関する素晴らしい考察文があり、是非とも全文を読んで頂きたいと思うのですが、そちらで、その選択の重みについてこう述べられています。

『小さな灯火』
http://www.actv.ne.jp/~uzura/timecapsule/oldbooks/omocha/act2/mitumete.htm

 NTT出版の攻略本に掲載されている田村氏の談話は、ゲームの狙いを裏付ける情報の宝庫だが、その中に面白い話が載っている。
 このゲームでは、エンディングの最後でヒロインの告白を受け入れるかを問う「はい、いいえ」の選択肢が出るのだが、これについて「女の子のリアルさにフラストレーションがたまらないよう、女の子を否定する選択肢を設けた」と言っているのだ。
 確かに、このゲームに登場するヒロインが見せるエゴイスティックな部分は、誰でも受け入れられるというものではないと思う。自分の場合を振りかえっても、看護婦のテディーの告白には「いいえ」を選びたくなったし、一番かわいく感じたスーにしても、最後に「他に女がいてもかまわない」とか言い出したのは、本当に嫌だった(それでも、結局は煩悩が勝った ←駄目人間……)。
 右の例に限らず、エンディングでの告白には、容易に受け入れがたい内容のものが多い。何故ならここでは、これまでの何もかもを失った(または捨て去る覚悟を固めた)、「弱さも醜さもむきだしのヒロイン」と、対峙することになるからだ。

 フラストレーションがたまらないように、というのは興味深い話です。
 だが、逆にそれは主人公=プレイヤーが責任を負わされる、という意味でもあります。

 そう、主人公が対峙するのは、生のヒロインなのです。

 上の引用にもある看護婦のテディー・アデレード。彼女は、心臓に持病を抱えており*3、自らの経験から、医学がもっと進歩すれば多くの人が救えると信じて、看護婦となった女性です。彼女は、さらに医者になることを目指し、日々学習を重ねていました。

 しかし、波止場で彼女は言います。

私…
貴方を引き止められる力を
持っていません…


でも…
貴方について行く覚悟は
あります…

 
 テディーは、思い描いていた未来よりも、主人公と共に在ろうとすることを選ぶ、というのです。

エゴだと思うかも
知れませんけど…
多くの人に必要とされるより、
貴方一人に必要とされたい…


私にとって大事な人は、
貴方だけなんです…

 彼女は、自嘲的な笑みを浮かべて言います。幻滅しますよね、と。白衣の天使と呼ばれる看護婦がこんなに身勝手で、と。おまけに、切望していた夢もあっさり諦めるのだから、と。

 しかし、彼女は続けて、主人公を見据えて言うのです。

でも、聞いてください…


私…看護婦とか
そういうものである前に
ひとりの女なんです…


 それが、彼女としての結論。

私の中で
貴方の存在が大きくなった時…
もうどうにもならなくて…


女として…
貴方に愛されたかった…
誰よりも愛したかった…


私、間違ってますかね?


 誰が、彼女の悲痛な叫びを否定できるのだろう。


 主人公の前に立つのは、そんなヒロイン達の姿。


 拒否する選択肢がある、ということ。ゲームプレイヤーとしての目的は、特定ヒロインとのハッピーエンドなのでしょうが、それは、主人公の本来の目的ではないのです。

 しかも、突きつけられたのは。
 主人公が好意を寄せていた筈の、何らかの背景、安全領域、立場を持って、その上で輝いていたヒロインではなく、場合によっては主人公が初めて目にする、「ただの女」としてのヒロイン。自分の意思で、それを選ぼうとしているヒロイン。


 そして、主人公は決断しなければならない。


 ヒロインに「主人公か、それ以外の全てか」という二者択一を迫り、その上で、さらに、主人公に、主人公の意思で、ヒロインが「ただの女」となる最後の一線ラスト・ディッチを超えさせた上で、その全ての責任を受け入れる決断を迫る。

 両者に、決断を迫る。

 そんな物語が、ここにはあるのです。


 ちなみに、好感度や必須イベント等の要因でヒロインの攻略に失敗した場合、そのヒロインが文字通りの「見送り」に来る時があります。
 これらの時、ヒロインは主人公に付いていくか、行かないか悩んだ末、最後の一線で踏みとどまり、仮面を被ったまま最後まで主人公と相対し、葛藤を内に隠したまま見送る事を選んだ、と考えると、味わい深いです。

 事実、いわゆる「ハッピーエンド」であっても、主人公について行く事の無い、つまり、想いを確かめ合う事が出来ても、その場が恐らく永遠の別れとなるヒロインも何名か居たりします。彼女らには留学などの輝かしい未来があり、それを捨て切る事は出来なかった。それは、ごく普通の判断です。人は、恋愛のみに生きている訳でも無いのですから。必ず、恋愛の為に、自分の全てを投げ打たなければいけないという訳じゃない。

 また、今は旅立てないという諸々の事情から、「いつか、迎えに来て欲しい」と申し出るヒロインも居たりします。ですが、結局この場合も、上の「普通の判断」と同様のものかと思います。主人公は諸国を旅する傭兵であり、その未来、その命も不確定なもの。本当に戻ってきてくれる保証も、そのときまで主人公の気持ちが変わらない保証もどこにも無いのですから。そういう選択をしたヒロインもまた、己の判断基準に合わせて、主人公よりもそれ以外を選んでいる訳です。それもまた、ごく普通の事。
 彼女達は、常識的である。

 つまり、主人公と共に旅立とうとするヒロイン達は、そういう意味で、既に「普通じゃない」のです。勿論、それを受け入れる主人公も。


ライズ、ライズ、ライズ

 ところで、ライズ・ハイマーというヒロインが居ます。当ブログでも何度か触れていますがが、ありていに言ってしまえば、メインヒロインのソフィアよりも遥かに人気のあるヒロインです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BF%E3%81%A4%E3%82%81%E3%81%A6%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88

ライズ・ハイマー (声:冬馬由美
つかみどころのない性格をしている。ドルファン学園高等部の女生徒。あまり表情を表に出さず、隙を見せない、常に手袋を外さないなど怪しい面が目立つ。対応も素っ気ないことが多いが、好感度が上がってくると恥ずかしそうに視線をそらしてくる。電撃プレイステーション誌上のみつめてナイトキャラクターの人気投票で1位を獲得した。CDドラマでは主人公に抜擢されて「東洋人」の動向を追いかける中でソフィアやプリシラと出会って変わっていく。誕生日は1月28日の16歳。血液型はB型。デートの効果が薄く中々好感度が上がらない上にED条件も厳しい為全キャラクター中トップの難度を誇る。

 このように、人気投票でトップを獲得していたりもします。恐らく、人気度という意味では、後述するアンと双璧を為すでしょう。ライズが一位、アンが二位、という辺りか。ちなみに、上で年齢が16歳となっていますが、出会った時は多分15歳だったかと思います。波止場のシーンでは、18歳という訳ですね。(余談ですが、上の記述の中に「血液型」という項目がありますね。また血液型性格診断かYO! とか突っ込みを入れたくもなりますが、このゲームに限っては、きちんと意味のある項目だったりします。というのも、主人公は、ゲーム開始時にプレイヤーが血液型を決めるのですが、傭兵という職業上、負傷もしたりもする訳です。まぁ、一騎討ちに負けた時、なんですが。その場合、好感度が高く、かつ、血液型が適合するヒロインが居れば、そのヒロインに輸血して貰えたりするイベントがあったりする訳です。)
 
 で、このライズなのですが。
 上にあるように、素っ気無い、あまり感情を露にしない、クールな少女なのですが、付き合ってみると、とても良い子であることが分かってくるのですね。
 主人公の、浮ついた冗談のような類や、楽天的な言葉、判断の甘さといったような物事に関しては容赦の無い言葉を投げかけても来ますが、それは、彼女が常に真摯に物事を考えているからでもある。
 そう、彼女は素っ気無いようで、いつも主人公の言葉をちゃんと受け止めているのですね。
 好感度の上がり方もまたゆっくりではあるが、それもまた、ライズが主人公をしっかりと評価判断し、その上で彼女なりの好感を積み重ねている、ということでもある。

 その真摯さが分かってくると、本当に彼女が愛らしく思えて来ます。
 
 また、このゲーム、好感度が高くなったヒロインの中には、匿名の手紙を出して主人公をデートに呼び出してくるヒロインが出てくるのですが、彼女もそういった匿名の手紙を出して来たりするのですね。で、顔を赤らめることもせずに、ごくクールに来てくれて嬉しいわ、見たいな事を言ったりする。それがまた愛らしい。
 ちなみに、他にもヒロインの中には直接主人公に声を掛けて、次の休みのデートに誘う子も出てくるのですが、ライズはそれはやらないのですね。少なくとも、自分は見たことが無い。その辺りの区別のつけ方、拘りが、また、愛らしく、可愛いかったりします。


 さて、そんなライズとの仲が進展し、幾つかのイベントをこなして行くと、ある事件が発生します。
 台風の晩、ドルファン王国は警戒が薄くなった所を突かれて、敵対中である、傭兵騎士団ヴァルファバラハリアンの首都城砦への侵入を許してしまいます。
 その先頭を進むのは軍団長ヴォルフガリオ。暴風と雷鳴の中で、ヴォルフガリオは自らの鉄火面を脱ぎ捨て、宣言します。自分は、現国王デュラン・ドルファンの兄、デュノスであると。彼は若い頃、側近達の陰謀によって殺されかけ、何とかドルファンから逃げ出した国王の兄でした。軍団長ヴォルフガリオが、傭兵騎士団ヴァルファバラハリアンを率い、ドルファン王国軍と何度も戦ってきたのはドルファン国王への復讐の為だったのです。劣勢であったヴァルファバラハリアンが残存兵の全力を用いてドルファン首都城砦に特攻を仕掛けたのは、ただ、現国王の首を取るため。
 そして、まさに復讐を果さんと王城へ侵入しようとする彼らの前に、主人公は立ち塞がります。そして、騎士としてデュノス・ヴォルフガリオに一騎討ちを挑み、打ち破るのです。
 主人公に、首を取るよう促すデュノス。しかし、突如、その前にライズが立ちふさがります。軍団長には一指たりとも触れさせない、と。
 彼女は、デュノスの娘だったのです。そして、主人公が戦の中で討ち果たして来たヴァルファバラハリアン八騎将、その最後の一人、「隠密のサリシュアン」でした。彼女はスパイとして、ドルファンに潜伏していました。(デュノスとしては、仕事を口実に、娘を危険から遠ざけようと、敢えてそのような命令をしていたようですが、少なくともライズ自身は、八騎将の一人としての自らの務めを果たそうとしていました。)
 しかし、デュノスはライズに、残りの人生を自分の為に使え、「普通の女」として、と命じ、自決してしまうのでした。
 一週間後。恩赦により放免となったライズは、主人公に果し合いを申し込みます。果し合いの場に現れた主人公に、彼女は言います。
 自分はスィーズランド(スイスをモデルにしたと思われる、作中世界での武装永世中立国)に戻る、だがその前に、父の敵である貴方を倒さねばならない、と。
 そして、主人公を責めるのです。
 どうして傭兵なんかやっているのか、と。民間人であれば戦わずに済んだのに、と。
 それは、自らが想いを寄せている、そして、同時に、父を、そして父の部下であり、同僚であった八騎将達を討ち果たしてしまった仇敵である、主人公への悲痛な叫びです。


 本当の事を言えば、彼女の叫びは、大きな矛盾を孕んでしまっています。というのも、そもそもライズが主人公に興味を持ったのは、主人公が傭兵だったから、なのです。彼女と偶然出会った時に、彼女は主人公が傭兵か、と問いかけてきます。肯定すれば知り合いになれますが、否定すれば、その時点でライズとの関わりは消滅してしまいます。
 推測ですが、恐らくライズは、主人公がそれなりに腕の立つ傭兵であることを見抜いた上で、自らの諜報活動にも役立つと判断し、主人公と知り合いになろうとしたのでしょう。
 あくまでそれは、隠密のサリシュアンとしての、実益に基づいた行動だった。
 だが、主人公と交流を重ねる中で、そこに、ライズ・ハイマーとしての彼女の要素が混じり始め、ついにはそちらの方が大きくなってしまった。

 全てが、矛盾。それは、彼女が、ライズ・ハイマーであり、同時に隠密のサリシュアンであることで、ずっと抱え込んできた矛盾。

 傭兵だったからこそ、知り合えた最愛の主人公。だが、同時に、傭兵だったからこそ、彼女に大きな悲哀をもたらしてしまった主人公。

 矛盾。どこまでも矛盾。

 だが、もはやそれは、彼女にはどうすることも出来ない。

 彼女は、八騎将の一人として、血を血でもって償わせる為に、戦いを挑みます。

 そして、主人公はそれを打ち破るのです。
 
 主人公が突如として追放になるのは、僅かその二週間後。上記のようなイベントをこなし、手紙を出していれば、ライズは波止場に現れ、主人公と共に旅立つことを申し出て、まぁ、ハッピーエンドとなる訳です。



 さて、ライズの背景について述べるために、こう長々と書き連ねて来たわけですが、私は、「決断」の意味合いにおいて、彼女のシナリオは一番端的な形で、それが現れていると思っています。
 ただ、波止場の段階で、ライズは既に全てのとらわれを失っています。だから、彼女は他のヒロインとは異なるのではないか、という指摘もあるかと思います。それでも、やはりそこには選択、「決断」があるのです。ただし、他のヒロインと異なり、その「決断」は手紙の前に既に為されてはいるのですが。
 
 具体的に述べれば、彼女が突如として選択を迫られるのは、主人公との果し合いに敗れた、まさにその時なのです。
 敗北し、崩れ落ちるライズ。そして彼女は言います。

私は…何もかも失ってしまった
…父も…八騎将としての
名誉すら…

 そして、

…殺して
もう…生きていたくない…

 と。


 そんな彼女に、主人公は言葉を投げかけます。父親の遺言に従え、と。

 デュノスの言葉。
 自分の人生を生きろ、普通の女として。


 彼女は、自分にそれが出来るのか、と言いながら、一人で考えさせて、と去って行くのです。

 そして彼女の姿が消えてから、遠くで鳴る、鎮魂歌の鐘。

 他のヒロインは、手紙を受け取った時、主人公か、それとも主人公以外の全てか、の選択を迫られます。そして、好感度によって、その選択は左右される。

 ライズもまた同様に、この敗北の時、選択を行います。
 自分の人生を生きるか、それとも。

 だからこそ……、好感度が足りなかった場合、彼女は自決してしまうのです。

 彼女にとっては、ヴァルファバラハリアン八騎将の一人、「隠密のサリシュアン」としての自分こそが、本来の自分でした。そこにある矜持と誇り。騎士としての己。

 かつて、主人公が八騎将のある一人を討った後、ライズがこう言ったことがありました。

気に病むことはないわ
勝者には生を、敗者には死を…
それは戦いの常だもの

敗者に明日はないのよ…

 悲しそうな表情で、ライズはそう言ったのでした。

 それが、ヴァルファバラハリアン八騎将としての、彼女の価値観。

 だからこそ、「隠密のサリシュアン」であり続ける為には、彼女は自決しなければならない。
 生きるということとは、「隠密のサリシュアン」である自分を捨てる、つまり、「殺す」ということ。

 つまり彼女は、「隠密のサリシュアン」であり続ける為に死を選ぶか、それとも、ライズ・ハイマーとして生きる為に、「隠密のサリシュアン」を殺すか、の究極の二択を迫られている訳です。
 そして、「隠密のサリシュアン」としての自分を殺し、誇りも名誉も何もかもすべて捨て、その苦痛に耐え抜いてでも、主人公は共に在りたい存在である、と思えるまでに主人公への好感度が高い値にあって初めて、生きる、という選択肢を選ぶことが出来る。結局、ライズ・ハイマーとしての彼女を現世に引きとめようとするのは、恐らくは、主人公への想いだけなのです。

 ちなみに、他のヒロイン同様にやはり、さらにその「最後の一線ラスト・ディッチ」を超えさせるのは、主人公の意思だったりします。
 先ほど、主人公はライズに父親の遺言に従え、という言葉を投げかける、ということを書きました。実は、ここで選択肢があります。
 もう一つの選択肢は、自分の決着は自分で着けろ、というものなのです。
 そして、それを選んだ場合、本当に彼女は自分で決着を着けてしまうのです。自ら決する、という形で。
 やはり、ここでも、主人公の意思があってこそ、彼女は、主人公以外の全て、即ち「隠密のサリシュアン」としての自分を捨て切る選択肢を選ぶことが出来る。生きることが出来る。


 そして、彼女は、選択する。

 「隠密のサリシュアン」であり続ける為に死を選ぶか。それとも、ライズ・ハイマーとして生きる為に、「隠密のサリシュアン」を殺すか。


 だからこそ、彼女が生きようと、そうでなかろうと、「鎮魂歌の鐘」は鳴るのでしょう。
 どちらかの、「鎮魂」を願って。


 ライズ・ハイマーとして「生きる」事を選び、波止場に現れた彼女は言います。

あの日から
ずっと考え続けたわ…


八騎将としての名誉も誇りも
失った自分は何なのか…


これから
どう生きればいいのか…
何の為に生き長らえるのか…


でも、結局
答えは出てこなかったわ
延々と自問自答が続くだけ…

そんな時
貴方が、この国を出ると知って
思わず駆けつけたの…


妙な話よね
貴方がこの国を出ようが
私には関係ないのに…

 ライズの出した結論。
 それは、きっと、主人公が全ての答えを知っている、教えてくれる、というものでした。

貴方と一緒にいれば
それが分かると思う…
いえ、分かる事が出来ると思う

 そして、彼女は言います。
 私を連れて行って、と。
 二人の手で、新しい明日を見つけたい、と。


 かつては、隠密のサリシュアンとして「敗者に明日はないのよ」と言い切った彼女。その彼女が、ライズ・ハイマーとして、主人公と共に見つけることを願った「新しい明日」。


 彼女の「告白」は、多くのヒロインの中でもかなり前向きなものに感じられます。或いはそれは、彼女が既に「選択」を済ませた、強い女性となっていたから、なのかも知れません。

そして、アンに求められたこと

 アン、というヒロインが居ます。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BF%E3%81%A4%E3%82%81%E3%81%A6%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88#.E6.88.A6.E4.BA.89

アン (声:國府田マリ子
ゲーム終盤で知り合う謎の少女。豪華客船のパーティで条件を満たせば夏に、満たしていなければ秋に知り合う事が出来る。水のある場所が好きな反面、冬の焚き火を非常に怖がってしまうこともある。歌を歌うのが好き。主人公が理不尽な言動をしても謝ったり許したりと無抵抗な性格。アルバイト先は薬局。コナミが実施したみつめてナイトキャラクターの公式人気投票で1位を獲得した。誕生日、血液型は共に不明。

 とあるように、公式の人気投票では一位を獲得したという、ライズと人気を二分するヒロインです。

 物語の終盤で、豪華客船から海に落ちた主人公は、アンに助けられることで出会いを果たします。彼女は他のヒロインとは違い、何故か、初めから主人公に強く好意を持っていました。主人公は、彼女もデートに誘うようになります。

 そして、三年目のクリスマスの時点で、アンの好感度を全ヒロイン中最高値にして、フラグとなるイベントを起こした場合にのみ、翌年三月に見られる、彼女のエンディング。彼女の場合は、主人公が手紙で浜辺に呼び出され、深夜、彼女と出会う、という特殊なものなのですが、そこで彼女は語ります。

 昔、好きな人が居た、と。
 しかし、その人は海難事故で亡くなってしまった。
 彼女は、その人を助けられなかった。

 その後、主人公がドルファンにやって来た時。
 主人公は、上陸早々、成り行きで暴漢達からメインヒロインのソフィアを助け出します。アンは、その主人公の強く、優しい姿にかつて自らが愛した人の姿を重ねていたのでした。彼女自身もまた、そのようにして助けられたことで、その人と出会ったのでした。だから、主人公が海から落ちた時、必死に助けようとしたのだ、と。同じ間違いは繰り返したくなかったのだ、と。

あの時の…
そう、この浜辺で貴方が意識を
取り戻した時…


わたしは心に決めたんです
この人を…愛したい…って


め、迷惑な話ですよね
見知らぬ人と、そっくりだとか
そういうので好かれるのって…



で、でも…
あの人に似ているからという
だけじゃないんです…

 彼女は言います。貴方を、愛してしまったんです、と。
 彼女は、主人公を、主人公として、愛した。
 愛するに値する存在としての、主人公に、出会えた。
 とらわれからではなく、純粋な愛の対象として。


 そして、彼女は言います。
 最後に、一つだけ聞きたいことがあるんです、と。
 この気持ちを、受け止めて頂けますか、と。
 彼女は、彼女としての本心を明らかにした上で、不安におびえながらも、主人公の答えを聞こうとする。


 他のヒロインと同様の、YES/NOの選択肢。


 しかし、彼女の場合、YESを選んでも、その先がありました。


 嬉し涙を流し、喜ぶ彼女。だが、彼女は続けます。

でも…
出来る事なら貴方と同じ時を
過ごしたかった…


バカな話ですよね…
人と同じく生きられないなんて
なのに人を愛するなんて…


……どうして神様は
人としての生を与えて
くれなかったんですかね?


わたし…
貴方と同じ時を過ごしたい!
人として生きてみたい!!


わたし…わたし…
このまま終わるなんてイヤ…
このまま消えるなんてイヤ…

 それは、いつもはどこかおっとりとした、大人しく、優しい一人の少女が、主人公の前で、初めて取り乱した姿でした。

わたし…貴方と…

 だが、そこから先の言葉すら、彼女には許されませんでした。
 彼女は、クリスマスのパーティーで主人公がプレゼントしたネックレスを残して、海に溶けてしまった。


 主人公は、彼女を抱きしめてやることすら、出来なかった。


http://game14.2ch.net/test/read.cgi/gal/1193236055/316を見て知ったのですが、ニコニコ動画で、アンのエンディングがランクインしているのだそうです。確かに、初見の方には色々と衝撃の動画だろうと思います。


http://www.nicovideo.jp/watch/sm411534

(余談ですが、「みつめてナイト」ヴォーカライズというCDの5、6トラックに、このアンの告白、そしてアンが歌う、アン専用のエンディングテーマが入っています。

「みつめてナイト」ヴォーカライズ「みつめてナイト」ヴォーカライズ
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 私はこのCDを、エンディングテーマの「みつめて」と、アンの歌うこの「恋をすると」だけを目的に買ったのですが、その前段のアンの独白ドラマまで着いていたのは掘り出し物でした。素晴らしい出来です。
 というか、このドラマ、上記のニコニコ動画にあるアンの告白とは、微妙に異なったものになっています。わざわざ脚本を変えて、別に録音したものなんですね。その違いを味わうというのもなかなか良いものかと。というか、この2トラックだけで個人的にはお釣りが来た、という感想でした。本当に、声優さんの名演技、と言いますか。

 また、これはさらについでなのですが。

 これはどちらかと言えばプレイ済みの方が参考になることかと思うのですが、地味に第1トラック「はじまりの瞬間」も、ファンには嬉しいトラックだったり。僅か1分31秒のトラックなのですが、プリシラやソフィア、レズリーの独白が混じって、なんというか、ドルファンに上陸したあの日の感覚、というか、そんなどこか懐かしく、どこか嬉しい気持ちになれます。そういう意味でもお勧めです。)

……どうして神様は
人としての生を与えて
くれなかったんですかね?


 主人公は、どう答えれば良かったのだろう。
 どうすれば、良かったのだろう。



 公式には、彼女は『残留思念』ということになっているようです。幽霊の親戚、という感じでしょうか。海に関わるイベントの多さや、想いを遂げた瞬間、消えてしまうことから、彼女を人魚と見做す意見も根強くあります。(というか、公式情報を知るまでは、自分も人魚だと思ってました。)
 メインヒロインであるソフィアのルートで、幼少の頃、ソフィアが今と同じ姿のアンと出会っている、という事実が判明したりします。
 なんであれ、アンはそういう存在、らしい。

 何故、彼女は主人公と共に在る事を許されなかったのか。

 このゲームでは、基本的にヒロインは、主人公と添い遂げる為には、それ以外の全てを捨てるということを迫られます。そんな製作者(=「神様」)の意図が伺えるようにも思えます。
 しかし、彼女はそんな「それ以外」を持っていなかった、という事なのかも知れません。
 何故、彼女は存在し続けていたというのだろうか。残留思念ということは、遂げたい思いがあり、その一念でのみ、存在を続けていたのだろうか。だとすれば、彼女には、主人公に対して想いを遂げる、という事だけが、唯一の望みであり、とらわれであったのだろうか。
 だからこそ、彼女は、「それ以外」を持っていなかった。
 だからこそ、彼女は、想いを遂げる為に、彼女自身を、その存在自体を捨てることが、代償として求められてしまった。
 
 彼女の取り乱し方から、主人公が想いを受け入れてくれれば、彼女自身が消滅してしまう事を、彼女は初めから認識していたようにも思えます。想いを遂げるのが残留思念を現世にとどめる唯一の命綱であるのなら、それが遂げられれば、と。

 それでも、己の全存在を賭けて、主人公を愛する事が出来るのか。

 彼女もまた、そういう意味での、決断を迫られていたのかも知れない。


 結局、殺すべき「隠密のサリシュアン」を「持って」いたライズは、その「隠密のサリシュアン」を殺すことでライズ・ハイマーとして生きる事が許され、「残留思念」としての己以外何も持つことが許されなかったアンは、それ自体を捨てざるを得ないが故に、結局、「生きる」ことが許されなかった。そういう事、なのかも知れません。

「みつめて」

 みつめてナイトのエンディングテーマ、「みつめて」にこんな意味の一節があります。歌い手の少女は言います。自分の夢は、「あなた」の為に可愛くなることだ、と。それが夢だと知ったら、「あなた」は笑うのかしら、と。
 
 歌詞全文は、http://music.goo.ne.jp/lyric/LYRUTND28561/index.htmlで見ることが出来ますが、そこにあるのは、生きる全目的が「あなた」である、ということを歌い上げる少女の姿です。
 
 このゲームのヒロイン達は、それだけの覚悟を持つという選択をすることで、初めて、主人公に想いを伝え、そして、添い遂げようとする権利を得ること出来ます。
 そしてまた主人公も、そこまでの覚悟を決めたヒロインの全てを受け止め、全ての責任を取る覚悟を持つという選択をして初めて、ヒロインと共に在る事が出来る。

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 未プレイの方には是非ともお勧めしたい作品なのですが、リンク先をご覧になると分かる通り、現状では、アマゾンのマーケットプレイスその他の中古品しか手に入らないというのが残念な所です*4。一回ベスト版は出たのですが、それすら中古でしか手に入らないようです。ですが、それでもとかく、機会があれば、プレイする価値は十分にあるゲームだと思います。



 両者に、選択を迫る物語。

 そういう意味でも、みつめてナイトは、実に興味深い、印象深い作品だと思うのです。

*1:ただし、ノエル・アシェッタに関しては、ちょっと話が違ってくるので、その件については項を改めて、またいずれ述べたいと思います。

*2:修正に関しての追記:初期稿では「王室会議云々」って部分も書いていましたが、王室会議関連まで、プリシラが発言した、というのは記憶違いだったようで。「王室会議の両翼、二大貴族が揃って法案を押し通した」というのはメッセニの発言だったようです。ただ、波止場のデートで、プリシラが外国人排斥法について一回言及した事はあったと思うので、その時に貴族等の動きについては言及はしていたのかも。確認してみないと分かりませんが。

*3:軽度の、心房中隔欠損症。参考:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%83%E6%88%BF%E4%B8%AD%E9%9A%94%E6%AC%A0%E6%90%8D

*4:幸いにも、上記マーケットプレイスその他を見る限り、プレミアが付いている、と言うものでも無いようなので、それなりに安く入手出来るようですが。