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エロゲのルート削除関連の話と、『みつめてナイト』のこと

 最近、ネットのエロゲ関連の界隈で、「Dies irae」「Garden」という二つの新作エロゲのことが話題になっているようです。
 ご存知の方も多いとは思いますが、簡単に言うと、事前に雑誌や公式ページで告知していた情報に含まれていた、一部ヒロイン(メインクラスのヒロインも含まれていたようです)のルートを削除した形で発売してしまった、ということのようです。そして、当然の結果としてファンから非難が殺到し、その後、それぞれのゲームを作ったメーカーが完全版製作や、あるいは無償でのルート補完の方針等を公式ウェブサイトで発表せざるをえなくなった、ということがあったようです。
 私自身も正確な情報を把握している訳ではありませんので、詳しい話を知りたい方は、ぐぐってみるなり2chの関連板を覗くなりされると良いかと思います。

 とかく、まぁ、そんなことがあった、と。

 で、そんな騒動の話を読んだりしていて、個人的に何となく連想してしまったのが、「みつめてナイト」のことでした。


みつめてナイト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%BF%E3%81%A4%E3%82%81%E3%81%A6%E3%83%8A%E3%82%A4%E3%83%88

コナミ発売のプレイステーション恋愛シミュレーションゲーム。「サクラ大戦」のレッドカンパニー(現:レッド・エンタテインメント)と「ときめきメモリアル」のコナミによる共同開発ということで話題となる。キャラクターデザインはセガサターンサクラ大戦にてサブキャラクターデザインを担当した竹浪秀行。

のちに『みつめてナイトR 大冒険編』という続編がリリースされる。しかしジャンルがRPGに変更された上、本作とストーリーのつながりもなく、同一キャラクターを利用した別の世界観を展開したゲームになっている。

両ゲームとも知名度や人気の点ではときめきメモリアルに劣るものの、固定的かつ熱心なファンが多いのが特徴。


コナミプレスリリース
http://konami.co.jp/press/1998/r.10.03.03.html

 「みつめてナイト」は、クラッシックヨーロッパ風の「ドルファン王国」を舞台に繰り広げられる純愛シミュレーションゲームで、主人公(プレイヤー)のドルファン入国シーンから物語は始まる。
 傭兵から聖騎士へ、プレイヤーは騎士の最高位を目指す一方で数多くの女性と出会うことになる。恋愛成就をゲームの目的とするも、自己のレベル・経験値を上げ最強の騎士を目指すも自由で、プレイヤーの目的によりストーリーは全く違った展開を見せる。
 この「みつめてナイト」の特徴は、「恋愛」に「戦争」「自己育成」など多様な要素を盛り込んだ点にあり、告白を得ることが最終目的であった従来の恋愛シミュレーションゲームの枠を超えて、プレイヤーの興味・ニーズに応じた幾通りもの遊び方ができる。
 登場人物間の人間関係・確執を重視したシナリオや、戦乱中の一騎討ちからクリスマス・バレンタインなどの日常の行事イベントに至るまで、500以上の様々なイベント(出来事/出会い)を採用し、ストーリーにドラマ性をもたせた。

 という訳で、かのサクラ大戦の、広井王子氏率いるレッド・カンパニー(現:レッド・エンタテインメント)が関わった、コナミ発売の、戦争SLG要素を含んだギャルゲーです。中世ヨーロッパ的世界に傭兵としてやってきた主人公は、その国で出会った女の子たちとかかわりあいながら、戦って功績を挙げ、地位を高めて行く、とかそんなストーリーのゲームです。
 上のwiki引用に固定的かつ熱心なファンが多い、となっておりますが、まぁ、私も大好きなゲームです。今でもリメイクやら続編発売やらが無いかなぁ、と心待ちにしていたりもします。『R』の方は、どうやら違う話らしいので未履修ですが。
 とかく、世界設定とか、裏設定とかがやたら丁寧に作りこまれていて、実に良く出来ているのですね。しかもなかなかヘヴィで容赦が無かったりします。それがまた良いところなのですが。ファンの間でよく言われているのが、「タイトルが最大の失敗」ということ。なにしろ「みつめてナイト」ですからねぇ……。確かにあまりにも小ッ恥ずかしいタイトルであることは否定できません。(なんつーのかなぁ、現代を舞台にした適当なアニメや漫画の劇中で、劇中人物が話題にしたりする、適当にでっちあげられた、架空のゲームタイトル名みたいなええかげんさ、というか。すみません分かりにくい例えですね。)

 ……というか、ヒロイン達が余裕で死んだり、毒殺その他の各種陰謀が余裕で飛び交ったりするような、しかもそもそもゲーム期間通じて舞台となる国は隣国としばしば交戦、という『戦争』ゲームにそんなタイトルつけてどうするんだ、と。


 ……いや、それはさておき。
 何にせよ、そんなゲームなのです。
 そしてまた、女の子達が背負い込んでいる物語も、実にきちんとしている(或いは、生々しいものになっている、とも言える)。ちなみに、ヒロインの人数は16人! ソフィア・ロベリンゲ、プリシラ・ドルファン、アン、ロリィ・コールウェル、レズリー・ロピカーナ、ハンナ・ショースキー、リンダ・ザクロイド、ジーン・ペトロモーラ、テディー・アデレード、キャロル・パレッキー、クレア・マジョラム、スー・グラフトン、セーラ・ピクシス、メネシス、ライズ・ハイマー、ノエル・アシェッタ……、と、wikiに載ってた順序のまま羅列してみましたが、こう眺めるとなんと言うか、壮観です。勿論、キャラによってシナリオの人気不人気、みたいなものはある訳ですが。(ゲームシステム的には、いわゆる「ときメモ」はやったことが無いのですが、どうやらその形を踏襲した上で、物語を構築しているようですね。)
 ええ、本当に大好きなゲームです。とりわけライズが。というかライズが。アンやプリシラも実に良いですが。


 で、「みつめてナイト」の魅力についてはいくらでも語れる、というかそのうちいつかまた項を改めて語りたいとも思うのですが、それはさておき、何故、このゲームが上の話とつながるのか、ということなのですが。


 この「みつめてナイト」、上記のように色々と作りこまれた、また登場人物も多いという背景もあってか、説明書が結構分厚いのですね。いや、今ちょっと手元にすぐには出てこないので、ちょっと印象で語っちゃっておりますが。
 で、そんな分厚い、結構丁寧に作りこまれた説明書の最終見開きページに、『キャラ対比表』として、ゲームに出てくるヒロイン全員がまとめて描かれた、ラフスケッチっぽい一枚絵が掲載されているのです。
 ほら、良くあるじゃないですか。アニメやゲームなんかで、キャラ同士の背丈を確認するために、全員を集合写真のように重ねて立たせて、身長を比較できるようにしてあるやつ。あれですな。
 ところが、この絵を見ているとちょっとばかり違和感を感じる部分があります。
 それは、そんな『集合写真』の後ろの方に「ロゼッタ」と名前が描かれた一人の女の子が立っている事なのです。
 そして、その見開きページの右上端には、細かい文字でこう書かれています。

※このゲームに「ロゼッタ」は登場しません。


 そうなのです。先ほど上に挙げたヒロイン全員の中に、「ロゼッタ」という女の子は居ません。というか、ヒロインはおろか、サブキャラとしてでも「ロゼッタ」などという女の子は出て来ないのです。

 初めは登場させる予定のヒロインだったけれども、シナリオの整合性か、あるいは時間的な事情から、削られたヒロインなのだろうか。
 それなのに、何で説明書の最終ページに、わずかに痕跡が残っているのだろうか。しかも、「登場しません」などという説明書き付きで。修正で、このキャラだけ消去することも出来たかもしれないのに*1

 私自身、このゲームを買ったのは、そもそも「隠れた名作があるらしい」ということをゲーム紹介記事とかで読んでのことだったので、時期的には発売されてから随分後のことでした。発売から何年も後、だったかも知れない。
 そんな感じでしたから、発売当時、ゲームを購入し、プレイした人々がこの「ロゼッタ」についてどんな印象を持ったか、或いは何らかの話題になったのか、そもそもこの件に関して何か公式な発表があったのか、もしくは、製作に関わったスタッフから、非公式ながら内輪話としてでも何らかの説明があったのか、その辺りの当時の状況については良く分かりません。


 ネットでぐぐってみると、気になっているファンの方は多いようです。多くの方が回答している、『みつめてナイトファンに100の質問』http://www5d.biglobe.ne.jp/~ptd6557/mitunai100qtop.htm(二束三文氏製作)にも、ロゼッタに関しての質問が含まれていたりもします。


 ただ、「ロゼッタ」というヒロインは登場しなくても、「ロゼッタ」という名前自体はゲーム中には出てきてはいるのですね。具体的には、ゲーム内の劇場にて、公演されている劇の、演目のひとつのタイトルがこの「ロゼッタ」なのです。
 そして、劇場(シアター)は、メインヒロインであるソフィアと関わりのある場所なので、その関連から、ソフィアと劇場の絡みで登場する予定のヒロインだったのでは、という推測は成り立つ話ではあります。事実、上記『100の質問』でも、ロゼッタに関しての質問に、そのような予想を回答として述べられている方々も見受けられます。
 
 ですが、そういった推測の方向が正しいものだとすると、その示唆する所はいささか物騒なものなのかも知れません。
 というのも、演劇『ロゼッタ』とは、大富豪の後妻となった女性の周囲に起こる悲劇と惨事の謎について描かれた物語であり、そのタイトルの『ロゼッタ』とは「事故死」した、とされている、演劇中で既に故人となっている、大富豪の前妻の名前なのです。
 この演劇が、存在しないことにされたヒロイン「ロゼッタ」と関わりのあることだとすると、彼女はそもそもゲーム中からも存在を消去され、また、さらにそのゲームの中の劇中劇においてですら、「既に死んでいる」存在とされた。つまり、言わば二重の意味で、或いは二度、「殺され」た。ある種の、執拗さすら感じさせる程に。そんな風に読み取ることも、出来なくはない。深読みになってしまいますが。
 いずれにせよ、そんな、まさに、存在自体が謎の「ヒロイン」の姿を、みつめてナイトの中には、わずかに垣間見えたりもした訳です。


 彼女がどんな存在だったのか、あるいはそもそもどの段階までは登場する予定だったのか。それは、ファンとしてはただ静かに思いを馳せてみるしかない。


 で、冒頭に挙げた、二つのゲームのルート削除の話になるのですが。

 各所の情報を総合すれば、これらのゲームでは、公式ウェブサイトでの宣伝や、雑誌記事での紹介等で、そういったヒロインが居て、そういったヒロインのルートがあることが、多くのファンの間であらかじめ共通認識として成り立っている話だったようです。だからこそ、それらのルートが削除され、さらに、その事実を伏せたままゲームの販売を行った二つの企業に対し、ファンは怒り、抗議の声をあげ、また、そういった圧力が発生した故に、メーカーは、完全版なり、無料配布なりで、とかく、ゲーム本体の補完をせざるを得なくなりました。
 あるヒロインのルートが、そのヒロインの人格そのものを表現するものであるとするならば、ルート削除は、ヒロインそのものの抹消すら意味する話かも知れません。つまり、「殺された」と表現できるかも知れません。
 しかし、本来は、公式な、『創造神』であるところの製作企業、あるいはその内部のクリエイターの明確な意思を持ってして、上記のような意味で「殺された」筈のヒロイン達に、再び生命の息吹が吹き込まれることとなった。ファン達の圧力によって。或いは、ファン達が彼女らを「認識」していたことによって。

 一度「殺された」彼女たちは、或いは、「生まれる」筈の無かった彼女たちは、生まれることを許された。


 ですが、おそらく、「ロゼッタ」に対しては、当時のファンはそのような「抗議」をすることも無かったのでしょう。当然の話です。ゲームを購入した人は、その説明書の最終ページを見て、初めてその、ひっそりと残った、僅かな痕跡に気づいたのでしょうから。そしてそもそも、彼女はルートどころか、ゲーム中から存在そのものが抹消されていたのですから。
 引用したwikipediaにもあったように、「みつめてナイト」は固定ファンが多い、一部にきわめて根強い人気を誇るゲームです。それ故に、新プラットフォームでのリメイク、即ち、『完全版』や、続編の製作を望む声が今でもあったりもします。そして、その過程で、ロゼッタのシナリオが補完される事を期待する声も散見されます。私自身も、そういった『完全版』や新作を是非ともプレイしたいと思ったりもしています。
 だが、現実的には、なかなか難しい話だろうなぁ、とは認めざるを得ません。今日に至るまで、続編を望む声はあっても、公式側でそのような動きがあった事は無いようですし、そもそも、ゲームの成り立ちからして、レッド・カンパニーとコナミのコラボレーションがあってこそ、という複雑な事情を抱えたゲームでもありますから。



 そんなこんなで、結局、今日に至るまで、いまだにその存在自体が「無かったこと」にされているロゼッタに比べると、冒頭に挙げた二つのゲームのヒロイン達は幸せだなぁ、とか、そんなことを思ったりもしたのでした。

*1:こういう原画の扱いの事情から、そういうことは出来ない、ということなのかも知れませんが