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「コーランで宣誓式」のこと/漸進的に物事を進めて行く意味

http://www.jiji.co.jp/jc/c?g=int_30&k=2006121000071

2006/12/10-14:36 「コーランで宣誓式」に反発=イスラム議員方針に保守派−米下院
 【ワシントン10日時事】イスラム教徒として初めて米連邦議会選挙で当選を果たした次期下院議員が「宣誓式でコーランを使う」と宣言、これに保守派が強く反発して議論になっている。9日付の米紙ワシントン・ポストが伝えた。

 こういう問題って、本当に難しいと思うんですよね。

 何しろ、向こうの人々にとって宗教ってのはそれぞれが譲れない世界の話ですし。いや、宗教自体は本当に素晴らしいものだと思うのですが。

 ぶっちゃけ、この人のこの宣言には何も間違ったところは無いのでしょう。宣誓の証として、宗教的かつ象徴的な意味合いを持った、何らかの道具を儀式に用いる。なら、それが聖書であってもコーランであっても何の問題も無い。建前上は。

 ただ、こういったデリケートな内容に関しては、本当に注意を払うべきなのは事実だと思うのですね。

 儀式や儀礼や宗教にまつわる何かは、特に。

 この手の改革は、あくまで漸進的に進めて行かねばならない。


 こういうことをやれば、明らかに一部の保守的な方々の反発を招く訳です。そりゃ、そうですな。儀式の意味合いを(彼等の視点で言うならば)変えてしまおう、というのですから。アメリカはあくまでゴッドブレスアメリカの国なのであります。
 で、このことを、この議員さんが今実行したとして、得られるものは、言わば議員さん本人及び一部のアメリカ人ムスリムの方々の、精神的充足感でしか無い*1訳です。

 で、重要なのが、この方は「イスラム教徒として初めて連邦議会選挙で当選を果たした次期下院議員」なのですね。ムスリム議員第一号さんなのです。
 今後も、ムスリムの方が米連邦議会選挙で立候補することはあるでしょう。そうした時に、有権者はその候補者をどう見るか。「また、何か騒動を起こすんじゃね?」と見ることは無いのか。かえって、活動の妨げになったりはしないのか。哀しいかな、ムスリムはアメリカ社会では少数派の人なのです。それはべき論ではありません。あくまで心の問題。だから道義では受け入れられない。恐らく、この人に投票した、キリスト教徒の人とかは、恐らくはもともとリベラル・民主党傾向の強い人が多いのでしょう。ただ、そういった人々だって、内心で反発しないとは限らない。やはり、それは心の問題だから。

 つまり、「第一号」という実に貴重なブレイクスルー、本当に大事な立場で、いきなり(あまり現実面では利益の無い)大改革に突っ走る必要は無いんじゃないかな、と。ムスリム議員が生まれた、それだけでも本当に凄い大改革なのですから。
 無論、先ほど述べたように、宗教というのは本当に難しい問題ですから、ムスリムなのに、聖書に手を置いて宣誓なんて! という気持ちになる、というのも分からないでもありません。外野からすれば、同じヘブライ系統の神々なんだから、というか、そもそもイスラムでは旧約聖書も啓典の一つとして採用しているそうだし、適当に上手く解釈して考えても良いんじゃないか、とも思いますが*2

 ですから、「ムスリムだから、聖書だけは勘弁して」ということで、無宗教的な、儀式に足り得るもの、例えば米憲法を記載した冊子とかに手を置くことで代わりとさせて欲しい、とでも言えば、まだ、受け入れられたんじゃないかな、とも思う訳です。それでも、反発はあったのかも知れませんが。でも、その反発も控えめなもので済んだかも知れない。

 で、ムスリム議員が10人とか20人とかそれぐらい誕生することが出来たら、それぐらい「ムスリム議員」というものが受け入れられるようになったら、初めて、「そろそろ、コーラン使っても良いですか?」と聞いてみる、とか。

 これは、所詮外野のたわごとです。向こうの宗教事情も、有権者分布の背景とかそいうのもよくわかりません。宣誓にコーランを使うことと、イスラムの啓典でもある筈の旧約聖書を使うこととの差異の、損得も良く分かりません。今回の議員さんにとっての正解が何なのかは、本当に分かりません。(ただ、こういったことを「宣言」してしまったことで、言わば議員さんにとっても、議員さんの背後にいる支持者の人々にとっても、また逆に保守派の人々にとっても、「引けない」問題となってしまった面はあろうかと思います。即ち、問題を、顕在化させてしまった。)
 いずれにせよ、この方が、コーランで宣誓したいという要求を降ろさなければ、それは通ることでしょう。それは論理的には、合衆国憲法の精神に沿ったものとしては何も間違っていないことですから。ただ、その代償として失うものは、看過できるものなのか。

 つまり、この議員さんは、今、自分の意志を通すこと、それに拘泥することで、かえって、自分や、これから議員を目指すであろうむスリム候補者、そして多くのムスリムアメリカ人の人々に不利益を齎そうとしているのではないか。それは、「正しい」ことなんだろうか。

 そんなことを、言わば日本的ナンチャッテ多神教徒で、普通に仏様にも神道の神様にも手を合わせたりもするところの自分は思ったりもするのでした。
 
 
 ……なんかもう本当に余談ですが、真女神転生Ⅱ(古今東西の神様天使悪魔総出演の上、ラスボスはヘブライ系の「創造神」*3 )みたいなゲームを出せる日本ってのは、そういう意味で本当に素晴らしいですね。エロゲ界に至っては、イスラム天使ですらエロゲヒロインにしてしまっているらしいですし。良く無事なものだ。ちなみに、関係ありませんが、イスラム天使というと、デビルサマナーソウルハッカーズに出てきた、大天使イスラフェールが何となく印象深いです。(……って、考えたら、ソウルハッカーズ「メッカのカーバ神殿の中身」が「威霊アリラト」って名前で普通に「悪魔」(仲魔)として登場していたYO! しかも何故か表面に土偶マークが刻印されていたりしたし! ヤバイYO! よく考えたらこれもヤバ過ぎるYO!!!!!)
 そういや、天使以外にもイスラムネタが出てきたエロゲは多少はある感じですね。自分が知っているのは、コソボ出身のイスラム教*4サブヒロイン*5が出てくる「エリュシオン」*6とか、後は「一神教アイマール)」とぼかしていますが、どうみても舞台がオスマン帝国イスタンブール*7で、主人公はそこで工作活動を行うヴェネツィアの外交官*8、という奴隷市場Renaissance辺りですか(ちなみに、この作品をプレイすると、白人奴隷出身(!)の帝国宰相が出てきて(ヴェネツィアは攻撃対象から外す、でも、という感じの発言の後で、)「ウィーンだ。あそこは地図から消す」とか言ったり、白人奴隷から構成される規律の高い清廉なイェニチェリ部隊と、彼等の俸給や特権目当てで、イスラム教徒なのに同じ武装をしてイェニチェリの「ふり」をしている偽イェニチェリ部隊との対立とかの史実を絡めたネタがあったりとかして、なかなか熱いですw)。なんというか、日本は素晴らしい。
 まぁ、ウソか本当か、日本に留学していたムスリムの人やユダヤの人が普通にとんこつラーメンを(おそらく「分かっていて」)食べていた(豚さんはどっちの人にとってもタブーなのです)、なんて話も2chにありましたし。「大丈夫、ここでは神は見ていない」とか。日本の空気、そして水がそうさせてしまうのかも知れませんね。やっぱ日本は素晴らしい。

*1:もっとも、それこそが「どうしても譲れない一線」である場合もあるのが、難しい所なのですが……。

*2:逆に議員さんにしてみると、今ブレイクスルーしておかないと、今後他に当選するムスリム議員が出ても、コーランを使えない状況が常態化してしまう、となることを懸念したのかも知れませんが。

*3:というか、ガチで〇.〇.〇.〇.の四文字を出しちゃう辺りがヤバ過ぎる。

*4:ちなみに、過去の話として、コソボ内戦の描写とかも出てきたりする

*5:このヒロインと結婚すると、主人公はイスラムに入信しなきゃいけないということになるw

*6:まぁ、このゲームはムスリム以外にも北アイルランド(ベルファスト)出身のカソリックの人が居たりとか、ユダヤ教徒の人が居たりとか、宗教的には色々と派手でした。

*7:ゲーム内での都の名前は「コンスタンティノヴァール」w

*8:ちなみに、正確には、神聖アイマール帝国との全面戦争を回避しようとしてロンバルディア同盟から派遣された使節団の一員(ヴェネツィア貴族)