雑文・今回の選挙とは

 明日は選挙と言うことで、適当に書いて見ようかと。
 
 今回の選挙の意義については、もうあちこちで散々論じられていることでしょう。という訳で、いまさらここで語るようなことでも無いのかも知れません。
 ですが、あえて各所で語られていることを、もう一度ここで繰り返させていただくとすれば。
 
 今回の選挙は、その意味合いをつきつめると、ぶっちゃけ、史上初の「戦争」と言うことが出来ると思います。与党の総裁・首相が、自らの支持基盤に巣食う旧体制派に挑んだ、という意味での。
 民主党は、小泉与党と郵政反対派の争いを「コップの中の争い」と呼称しようとしました。その対決を矮小化してみせることで、自らの埋没を防ごうとしたのです。
 ですが、この「コップの中の争い」こそが、むしろ与野党対決よりも、大きな争いと言えるのです。
 
 与党にも、野党にも、支持基盤というものがあります。業界団体、利権、と言い換えてもいい。それぞれの党は、それぞれの支持基盤の「意向」を受けた議員から構成されます。議員は誰でも票を失いたくない。だから、身動きが取れなくなる。
 2001年4月26日、小泉純一郎は総裁選挙に勝利し、第87代内閣総理大臣に就任しました。彼を総裁に当選せしめたのは、国民の支持でした。それまでの総理大臣は、あくまで派閥間の力学により決定されていたことを考えると、そもそもその就任の経緯からして、異例尽くめでした。
 恐らく、自民党の旧勢力としては、外面に、一般国民に受けのいい「看板」を適当に据えたつもりだったのでしょう。
 だが、小泉首相に、そのつもりはなかった。看板のままで居るつもりはなかった。彼は「国民的支持」を背景に権力を縦横無尽に振るい、己の望む、国民に良かれと思う「改革」を実現して行きました。結果、自民党の党内「抵抗勢力」は少しづつ、だが確実に崩壊して行った。「利権」は、政権に影響力を行使し、そこから果実を得て初めて「利権」足りえます。そして、各種団体は、利益提供の見返りとして票を集め、政治家達に提供する。
 しかし、小泉首相がそれらの基盤からの影響力、意向を無視しつづければ、「利権」の意味合いはなくなります。各種団体と、政治家のつながりは、薄まって行く。最近自民を支持する、かつては集票マシーンとして名を馳せた建設業界を始めとする各団体から聞こえてくるのは、「声が反映されない」というボヤきばかり。(ついでに言えば、組織票を売りにして自民党と連合を組んでいる公明党も、今はひたすら首相に引きずられているように見えます。)
  
 そして今、小泉首相は、ある最大の利権団体・集票組織に対しての、戦争に挑みました。
 即ち、郵便局。
 
 郵政民営化小泉首相が政治家を志した頃から、20年来にに渡って主張しつづけてきた、一つの大きな改革です。
 ある意味、その主張は極めて単純なものです。
 
 これから、国の財政はどんどん厳しくなる。さまざまな改革が必要になるだろう。とにかく国としての支出を減らさなければならない。「小さな政府」にしなければならない。
 だからこそ、30万人もの「官」によって為される郵政という事業を、今のうちに国から切り離し、民間の事業としなければならない。「官」の事業はどうしても硬直化し、膨大な無駄と浪費を生む。だからこそ、それを切り離し、郵便を民間の知恵に任せることで、国を身軽なものとする。
 また、同時にそこに溜め込まれている340兆円もの、官が抱え込んでいた資金を民間経済に流れ込ませる。民間の知恵は、官よりもそのお金を有効に活用することになるだろう。
 
 しかし、このアイデアは、政治家・小泉純一郎以外、誰も賛同しませんでした。
 
 なぜなら、この「郵政」の中に居る、そういった利権とともにある人々がそれを望まなかったからです。(「世襲制で年収一千万」といわれる特定郵便局長や、郵政下請け業者等々。)
 官営という保護の元で、そこに居る人々は利益を享受し、その見返りとして、自民党に大量の票を提供してきたのです。そして、自民党はますますそれらの人々に便宜を図り、支持基盤を、得られる票を拡大して行く。
 まさに、理想的なギブアンドテイク。ただし、そのツケは一般国民が背負わされている訳ですが。
 そして、自民党は、この大量の票を提供する団体に背けなかった。
 それが、ずっと今まで続いてきた。
 
 一方の、民主党
 民主党は民営化法案に反対しました。色々理由をつけては居ますが、究極のところ、民主党の中にある連合・官公労、こういった支持基盤が、やはり民営化を望まなかった。究極的にはこれに尽きます。結局、民主党はこれらの団体に抵抗できなかったのです。
 
 与党も、野党も、票田たる郵政系団体に、抵抗勢力に支配され、その奴婢になり果てている。
 そして、彼らに対抗するには、より大きな力、「国民の声」を示し、打破するしかない。
 
 だからこそ、小泉首相は解散に踏み切った。
 本来、自民党を支えてきた重要な支持基盤を切り捨てて、敵に回してまで。
 
 これは、自民党として、史上初のことなのです。
 というよりも、明確に自民党の「変質」を示すものです。
 なにしろ、何よりも貴重な自らの票田、支持基盤に対して戦いを挑んだわけですから。
 
 小泉首相は言っています。「4年前、私は約束した。自民党をぶっ壊してでも改革を進める、と。…」

 そして、今までに、すでに実質的に首相は自民党を「ぶっ壊して」来ています。前述したように、自民党と各種団体の関係は大きく変わり、また政治家も変わってきています。彼は宣言した通りのことを実行してきたのです。
 しかし、いままでのようなやり方では、戦えない頑強な敵に突き当たった。
 
 どうするか?

 ならば、本当に、「ぶっ壊す」しかない。
 
 つまり、改革に抵抗する支持基盤を丸ごと切り離す。そこから離れられない議員ごと。

 解散前、各マスコミは民主党や反対勢力に有利である、自民党には不利である、という予測を伝えていました。
 己から組織を弱体化させて、勝てるはずが無い、と。
 
 しかし首相は解散に踏み切った。まさに、「ぶっ壊して」まで。
 
 何故か。
 
 首相は解散時の演説でこう述べています。
 

 私は、今、国会で、郵政民営化は必要ないという結論を出されましたけれども、もう一度国民に聞いてみたいと思います。本当に郵便局の仕事は国家公務員でなければできないのかと。民間人ではやってはいけないのか。これができないで、どんな公務員削減ができるんでしょうか。どういう行政改革ができるんでしょうか。
 
http://www.jimin.jp/jimin/info/sousai/enzetsu.html

 首相は信じたのです。一部の、国政を歪めようとする諸勢力よりも、国民の声は強い、と。
 
 だからこそ、この選挙は史上初の戦いなのです。
 
 つまり、国民の声は各種団体よりも強いと信じる、首相及びその配下の自民党と、あくまで支持団体の集票を恃みとし、その支配から抜け出せない、反対派+民主党等の、旧弊諸勢力の戦いなのです。


 この戦いに勝利すれば、それは貴重な「戦例」となるでしょう。
 利権に関係しない国民の声が、集票を恃みとする諸勢力に勝利した、という。
 
 そして、それは今後の日本の政党政治の歴史を変えてゆくことでしょう。
 自民党はもはや、かつての自民党には戻れません。あくまで、「国民の声」を基調として政策を模索する政党になって行くでしょう。業界の票田よりも無党派が強いとなれば、そっちに従わざるを得ない。
 そう、「国民の声」こそが支持基盤という、極めて健全な政党へと、自民党は変わって行くことになるのです。
 小泉首相は言いました。「郵政改革というのは、行政改革のみならず、政治改革である」と。
 その真意は、まさにここにあるのです。
 
 無論、抵抗勢力、国政を歪めようとする諸団体は郵政だけではありません。今後も様々な方面での改革が必要になるでしょう。
 ですが、今回の郵政で「国民の声」は抵抗勢力よりも強い、という実例を示すことが出来なければ、それらの諸勢力、諸団体との戦い、即ちその先への改革は霞と消える。
 
 小泉首相は、この郵政解散での勝利でもって、それらの諸勢力の戦いとの嚆矢としようとしているのです。
 
 それこそが、改革。
 
 行政が変わる、そして政治が変わる。業界団体の為の政治から、国民のための政治に変わる。
 
 その第一歩を踏み出すか、否か。
 今、日本国民全体に、それが問われている。
 
 だからこそ、この選挙は、非常に重要な選挙なのだと思うのです。
 
 明日の選挙が、日本の今後の歴史にとってよきものとならんことを、願います。